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別に病気ではない、ただ少数派というだけで、正常な恋愛は出来る。そう説明しようとしていた時だった。
イツキの額にポツっと水滴が落ちてきた。
よく見ると高橋は大粒の涙を浮かべ、雫になりイツキの顔面に雨を降らせてきた。
「好き……だと思ってた……俺のこと…特別なんだって…思ってた……」
嗚咽を漏らしながら、高橋が泣いている。
ああそうか。
勘違いさせてしまった己の愚行を後悔する。
目をかけているつもりだった。
教師として、生徒を導いているつもりだった。
親しげに笑いかけるのも、授業中教室をまわりながら高橋のノートだけ覗き見るのも、休み時間の僅かな時間を呼び出してパンフレットを渡すのも、すべて。
何も特別な感情を持ってしていたことではない。
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