【読者への挑戦状】

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【読者への挑戦状】

 さて、筆者はここに、事件の解明に必要な材料は全て出そろったことを宣言する。  また、本挑戦状はたとえ読み飛ばしたとしてもなんら差し支えないということも、あわせて宣言しておく。  その上で、貴殿がどうするかはとうぜん、貴殿の自由だ。  読み飛ばして本編の続きを読む。あるいは、内容にだけは目を通してから続きを読む。  どちらも結構。だが……  筆者はもう一つの選択肢を提示し、それをこそ最もお勧めしたい。  筆者はこの物語を、その選択肢のために作り上げたと言っても過言ではないからだ。    貴殿にはぜひ、この事件の真相……つまり、  呪術師グラムルを殺したのは誰だったのか――?  それを、推理してみて欲しいのである。  ※もちろん、本挑戦状に挑戦するかどうかは各人の判断によるものであり、これはそれを強制するものではない。  ※また、当然このままではルールが不明確なので、今回の問題がフェアなものとなるよう、以下に留意すべき点を挙げておく。 ==================== ▼留意点 ====================  1、犯人は、後述の登場人物一覧に名前があり、かつ「呪術師殺人事件の容疑者」としている人物の内の誰かである。  2、この事件に関して、ここまでに描写の無い「魔法」「呪い」「特異体質」は用いられておらず、推理の際に考慮の必要はない。  3、特に描写が無い限り、この世界における物理法則は、我々の生きる現実世界の法則に則する。  4、本作における語り部兼探偵「イマジカ」は、信頼に値する語り部である。虚言癖があったり、幻覚を見ていたりはしない。  5、本作において、犯人を除き理由無く嘘の証言を述べていたりしない。  6、現時点で、犯人が犯行を行ったという直接の証拠は存在しない。イマジカの宣言はあくまで、限られた容疑者の中で、ある人物以外には犯行が不可能だった、という消去法的な推理に基づくものである。(要するに、犯行が不可能だった人物を除外し、残った人物が犯人である。)  7、現時点で、犯人の動機について考慮に入れる必要は無い。  8、もしこの事件に、殺害を行った犯人の他に、その犯人を唆した真犯人と呼べる人物がいたとしても、それを考慮する必要は無い。  以上を、本挑戦状への挑戦に伴い、留意すべき点とする。 ==================== ▼主な登場人物一覧 ====================  リーリア・S・クリスタ   クリスタ王国第一王女。現国王の妹。  グラムル   呪術師。宿の経営者。   *呪術師殺人事件の被害者。  イマジカ   本作の探偵。王女のお抱え探偵。   *呪術師殺人事件の容疑者の一人。  アイラ   呪術師の宿付きの使用人。元奴隷。   *呪術師殺人事件の容疑者の一人。  イレーナ   元吟遊詩人の女性。   *呪術師殺人事件の容疑者の一人。  セニス   王族殺人事件の犯人。狼男。   *呪術師殺人事件の容疑者の一人。  タグ   奴隷。   *呪術師殺人事件の容疑者の一人。  ダグラス・グーダルク   国の英雄。領主。辺境伯。吸血鬼。   *呪術師殺人事件の容疑者の一人。 ====================  加えて、推理に必要な情報の中からいくつかを抜粋し、その内容を明確にしておく。 ==================== ▼特異体質 ==================== 〈真実の眼〉  眼にした人やモノに宿る「理外の力」を任意の物体に出力できる。 〈変相〉  顔の造形を自由に作り変えることができる。  それ以外の、体格や髪の色などはその埒外。 〈吸血鬼〉  不老不死。弱点は陽光と銀であり、銀には触れることができない。  匂いで性別を判別できる。 〈狼男〉  男性にのみ発現する特異体質。  満月の夜、半人半狼の姿になると同時に、人間の姿の際の三倍程度の体躯となる。 ==================== ▼魔法・呪い ==================== 〈葡萄酒の記憶〉  モノに付着した液体の過去の姿を幻視できる。 〈血縁の加護〉  身体能力を向上させる。  血の繋がった双子の遺骸を体内に取り込むことで習得が可能。 〈失声の呪い〉  声を出すことができなくなる。 〈従順の呪い〉  術者の命令に逆らうことができなくなる。 〈裂傷の呪い〉  この呪いが付与された武器によって付いた傷は、塞がることがない。 ==================== ▼魔法具・呪具 ==================== 〈賢者の筆記具(賢者の手記・賢者の筆)〉  その場で行われた会話を自動で記録する。  賢者の手記への記入方法は賢者の筆による自動記録のみであり、手動で文字を記すことはできない。  持ち主の発言にのみ、それとわかる印がなされる。 〈束縛の腕輪〉  嵌められた腕の機能を著しく低下させる腕輪。  一度嵌めると、腕輪を嵌めた者の口付けがなされるか、呪いが解けない限り外す事はできない。 ==================== ▼いくつかの手掛かり ==================== ・呪術師は即死だった。 ・凶器は、晩餐会で用いられたナイフである。 ・ナイフはローブを貫通して心臓を一突きにしていたが、相当な力を加えない限りそれは不可能だった。少なくとも、確りとナイフを握り締める必要があった。 ・犯人はナイフを右手で握って、呪術師を殺した。 ・呪術師による呪いは、呪いをかけられた者がその呪いをかけた者を殺した場合、全て解ける。 ====================  それでは、貴殿が正しい答えにたどり着けることを願って。  ※回答は解決編をご覧ください。  ※挑戦状へのコメントには正解が含まれている場合がありますので、ご注意ください。
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