2人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「ねえ千花(ちか)、メリーさんって知ってる?」
前の席の私の親友、東沙羅(あずまさら)が授業中にも関わらず堂々と話しかけてきた。
案の定、教科担当の先生に怒られてうつむき黙り込む。彼女は思いつくとすぐに行動を起こしてしまう節がある。私は少しかわいそうな気持ちになりノートを一ページちぎって、
『知ってる、怪談でしょ?』
と書き今度は先生にバレないようこっそりと沙羅に渡した。
しばらくして、彼女は先生にバレないよう体は前を向いた状態で器用に手渡してきた。
ノートには、
『正解! この話長くなるから授業終わったら話すね』
とだけ書かれていた。
消しゴムで消された文字がうっすらとあり、目を凝らして見ると『そう、そのメリーさんなんだけど』と一度話を続けようとした痕跡が残っていた。
普段はホラー好きしか知らないような怪談話をよくする彼女だというのに、誰でも知っているレベルの怪談、メリーさんの話をしようとするものだから、無性に気になって授業に集中できない。
ホラーが苦手なはずの私も、どうしてか沙羅の話にはつい聞き入ってしまう。彼女の怪談はとても魅力的だった。
ふと冷静になると、机の上に無残に置かれたノートの断片が目についた。
長話になると思いちぎったノートは一往復のキャッチボールで役目を終えてしまった。前に座っている沙羅は授業に集中して先生の話に耳を傾けているようだ。
自分が授業に集中することができない今の現状とノート一ページ分の損失、ついでに私を差し置いて授業に集中している沙羅に腹が立ち、その断片に『私のノートと集中力を乱した代償は大きいぞ。後で購買のクリームパンおごってもらうからな』と書き、小さく折って出来たカドでちょっと強めにつついた。
後頭部をさすりながら渡された沙羅からの返事は、
最初のコメントを投稿しよう!