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「……ぃ、いぬかいさん」
「おきてー……」
「……ぉ、ぉーい」
「……先生いるよー!」
……あれ?
ああ、また寝過ごしたのか。
のそりと起き上がって、起こしてくれた生徒に礼を言った。
最近教室で誰かに起こされる事が多い気がする。寝不足だろうか? 何か夢を見ていた気もするが……。
俺が起きたのを確認すると、担任がやけに上機嫌で話し始めた。
「お前らも噂には聞いたと思うが、今日このクラスに転校生が来る」
途端に教室がざわつく。興奮が抑えられない様だ。伊地知もガッツポーズをつくって喜んでいる。そんなに嬉しかったのか。
ざわつきが収まる前に、担任が転校生を呼んだ。
「よし。夜鶴、入れ」
「名前呼び……! きたこれ……!」
──バンッ!と、大きな音を立てて扉が開く。
シーンと、教室が静まり返った。
転校生は堂々と担任の近くに歩いていく。途中、心配になったのかチラリと扉を振り返っていた。
カツカツと音を立て、背伸びをしながら名前を黒板に書いていく。
クルリと正面に向き直り、大きな声で自己紹介を始めた。
「水嶋夜鶴だ! 今日からこの学園に転校してきた! これから宜しくな!」
ちょっと五月蝿いが、挨拶はしっかりしている。
ただ、そのもじゃもじゃした長めの髪と分厚い眼鏡は邪魔では無いのだろうか。
お気に入りの格好だったりするのか?
「なに、あれ」 「今どきあんな眼鏡とかどこに売ってあるの?」 「つーか、全体的にダサ」 「あいつ、門間先生に名前呼ばれてなかった?」 「信じられない、よくあれで人前に立てるよな」 「キモイんだけど、帰れよ」 「アンチ君……だと……! 」 「どこで爆破されて来たんだよ」
そこまで言うか? 転校生も怒っているようで、怒鳴り声を上げた。
「おい! お前ら! 人を見掛けで判断しちゃいけないんだぞ! 俺は優しいから許してやるけどな! ちゃんと謝れよ! それと、爆破はされて無い!」
……最後の必要か?
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