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「凪織?」
「ああ。今度風紀立会いの下一度会うらしい」
「んー?」
校舎に向かいながら伊地知に昨日の事情を掻い摘んで話していると、最後らへんで急に口数が少なくなった。時々「おかしい」と小声が聞こえる。
不思議に思い「どうした」と尋ねると、相手も首を傾げて聞き返してきた。
「ねえ、犬甘くん」
「なんだ」
「その子、本当に凪織、って言ったんだよね?」
「ああ。言っていたぞ」
「そっか……」
それっきりまた黙り込んでしまった。
先程まで元気すぎるくらいだったのに急に大人しくなると少し心配になる。
「伊地知」
「……ん?」
「大丈夫か?」
「へ?」
ぽかんとこちらを見上げた伊地知は、一瞬の間のあとヘラリと笑った。
「なーんでーもないっ! 大丈夫だよー!」
「……そうか」
伊地知が言いたくないなら無理に聞くこともないだろう。
途端にベラベラと世間話を始めた伊地知に適当に相槌を打ちながら、丁度見えてきた校舎を仰ぎみた。
──ああ。
「雨が降るな」
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