鬼ごっこ 後日

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「い、いいいい、犬甘くん!」 「なんだ」 「大丈夫だった!? 何処も怪我してない!? 風紀に意地悪されなかった!? あああ! 俺があの鬼畜眼鏡に連れて行かれなければ一緒にいれたのに!」 ……朝から元気なのはいいが、俺が寮を出た瞬間話し掛けるのはどうやったんだろうな。 待ち伏せか? 「ごめんよおおお! 犬甘くんをあの魔の巣窟に連れて行かせるなんてぇ!」 「……俺は大丈夫だから、落ち着け」 「でも! でもぉ!」 ……どうすればいいんだ。 「あー、……伊地知、こっち向け」 「そもそも俺があの時……へ? 何?」 「ん」 「……これって」 「やる。この間のお返し」 そう言って伊地知の手の上にポケットから出したそれを置いた。 「あめ……」 「青りんご味。気に入らなかったら捨てていい」 「おれ、に?」 「ん」 あれ? 落ち着くように渡したんだがな。 喋らなくなったが、代わりに地面を転げ回っている。 ……何を間違えた? 「……伊地知」 「──! っ! ふぁぁぁ! ……。……っ!」 ……待つか。 結局、伊地知が落ち着いて一緒に校舎に向かうまでに三十分ほど時間が過ぎた。 ……まあ、楽しそうだからいいか。
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