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体育館で恒例の生徒会イベントを目撃した後、部活動紹介を眺めていると、ぽすっと左肩に何かが。
……あれ? 左にはあのお方がお座りになられていた、はず〜、だよな……?
そーっと、左に視線を向けると……。
「わぁーお」
叫ばなかった俺を誰か褒めて欲しい。
目を向けた先には、“あの”一匹狼君が気持ち良さげに眠ってらっしゃる。
あら綺麗なお顔。
そう。そこまではいい。問題はその後だ。
何故か狼君が枕にしているそれは、俺の左肩だった。
何がどうしてそうなった。(真顔)
え、どうしろと? そっとしておくか? えっ? これ起きたとき殴られない? 気色悪いんだよとか言われない?
そんなことになったら泣くよ? 体育館で大泣きするよ?
どど、ど、どうしよう。起こしていいのか?
だって、あの狼君だぞ? 族潰しやら、ヤクザに喧嘩売って無傷で帰ってきたやら、挙句の果てにこの学園の裏番なんて噂されている狼君だぞ?
ムカついたら相手を瀕死の状態になるまで殴るって言われてる奴だぞ?
おいそこの奴、あいつ死んだなみたいな哀れみの目で見るな。こら、目をそらすな。助けろください。切実に。
「……ふっ。……み、け」
「へ!?」
み、け? み、……け? ……み、つけた?え?見つけたって言った?な、なにを!?
と、とりあえず落ち着け。深呼吸だ。
よし、まずはゆっくり息を吸ってー。
「んー……」
「ひゅっ」
びっくりした! マジでびっくりした! 勢いよく吸ったせいで噎せそうになった。あぶねぇ!
ど、どうしたらいいんだ。狼君を観察してみたことはあるんだが。基本寝てるか、窓の外を睨んでいることくらいしか分からなかったんだ。
あぁ、こういうことなら王道君が来てからじゃなくて、先に観察しとくんだった。
お楽しみは後にとか思うんじゃなかったー!
「んー……。ん? ……あ?」
お、起きたー! ああやばいよ、何があったって顔してるよ。こっちが聞きたいよ。
あ、目が合った。
「…………」
「…………」
ち、沈黙がこんなにも恐ろしいものだったとは。
さよなら母さん。愛してるぜ。
なんて巫山戯てる場合じゃないんだよ。えっと。と、とりあえず。
「おひゃ……! ……おはよう、ございます」
か、噛んじゃった。うう、視線が痛いよぉ。
「……ん。おはようさん」
え、かわいい。(真顔)
誰ですかこの天使。ん。って、おはようさん。って、しかも何そのふにゃってした笑顔。
狙ってるんですか?ギャップ萌えですか。萌えましたけど。
「肩。わりぃ、な?」
「いえ。ありがとうございます」
「んー? うん。どういたしまして?」
ゴフッ! し、死ぬ。さっきとは別の意味で萌え死ぬー!
クソっ!イケメンが! 上目遣い&首傾げなんて似合うのはチワワだけだと思ってたのに!
殺す気か!
眠そうだし、目つき悪いのにかわいい。これが人類の神秘か。(錯乱)
「大丈夫か?」
「はい! 大丈夫です!」
「……大丈夫そうだな。じゃあな」
「はい! 行ってらっしゃいませ! って、あれ?」
やばい、いつの間にか部活動紹介終わってた。
狼君も気だるげに体育館を出て行ってしまった。
慌てて俺も外に出る。
……それにしても、狼君にあんな属性が着いていたなんて。
おかん属性は予想していたが、いい意味で裏切られてしまった。
これは、仕事的にも腐男子的にもやるべきことは一つ!
狼君の観察日記をつけることだ! 謎の生態を解き明かして見せる!
よっし! 久々にやる気が湧いてきたー!
「おい、授業始まってるんだが?」
「あ、すみません」
「次遅れたら課題追加な」
「えぇっ! そんなぁ!」
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