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朝、目覚ましの音で目が覚めた。
俺はどうも朝が苦手で、目覚ましを止めた後も、ぼんやりと三十分程天井を睨んでいることが多い。
だから、朝は余裕があるように、二時間ほど早く目覚ましをセットしてある。
「……はぁ」
溜息を吐いて、のそりと体を起こす。
一度起きたら後は簡単だ。洗面所に行き、寝起きでいつもの数倍は鋭い目つきで、自分の顔を睨みつけながら、支度を淡々と終わらせていく。
親代わりにもらったルビーの揺れるピアスを両耳に付け、何も手を加えていない肩につく程度の黒髪を手ぐしで整える。
ようやく慣れてきたコンタクトを付けた後、簡単な朝食を用意する。
トースターでパンを焼いている間に、制服を着る。黒い寝間着は適当に畳んでベッドに置いておいた。
ヨーグルトと、インスタントの味噌汁。バターを塗ったパンを齧り、微糖の珈琲で流し込んだ。
ヨーグルトは健康のために、味噌汁はただの好みだ。
食器を水につけておき、黒いパーカーの上から紺のブレザーを羽織る。ネクタイは二年生を示す赤色。
体調を崩しやすい俺は、理事長から特別にパーカーを着る許可を貰えていた。
ニュースの流れるテレビを消して、荷物を確認する。
今日は確か、高校に上がった新入生の為の部活紹介で4限までしかなかった筈だ。
明かりを消して扉を開けた。
「行ってきます」
オートロックで鍵の閉まる音が聞こえた。
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