クジ運

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俺が起きたことを確認した担任が、朝の連絡を行う。 「で、だ。昨日言った通り、このSクラスの中から代表者を選んで、一年生のFクラスの学園案内をしてもらうことになった」 教室の空気が氷った。まあ、そうなるのも無理はないだろう。 この学園はいわゆるエスカレーター式のもので、小等部、中等部からの持ち上がりだ。 俺は高等部からだから関係ないが、小等部から上がって来るにつれて出てくる、いわば問題児。 そんなヤツらを纏めているクラスがEとFだ。 金持ちの坊っちゃん達でもそういう不良に走る生徒は当たり前に存在している。 暴力関係の問題児がF。その他の不登校や留年予備軍などを纏めたのがEだ。 そのため、Fの方が色々と危ない。何故か男子校なのに、そこにいる理由の中に強姦なんてのがあるくらいには、危ない。 まあ、Fでなくても強姦で退学になっている者は少なくないみたいだが。それは今関係ないだろう。 「ちなみに言うと、案内にはFクラスの担任もついて回るらしいから、そこまで危険なことは起きない。と、思う」 「そこは断言してくださいよ! 不安でしかないんですけど!!」 「大丈夫だろ。多分」 「多分ってなんっすかー!!」 「はあ。伊地知(いじち)はうるさいな」 「理不尽っす!」 ……仲いいな。 「とりあえず、なりたいヤツ手上げろ〜」 「…………」 「まあ、だろうな。って事で委員長、クジ作れ」 「え。あっ、はい!」 二人のやり取りを呆れたように見ていた委員長が、手際良くクジを作り始めた。 あっという間に作られたクジを、名簿順に引きに行く。 「よっしゃー! 俺まだ生きれる!!」 いじちとか言う名前のやつが、クジを握り締めたまま涙を流して喜んでいた。 そんなに嫌だったのか。 「いいからさっさと席に戻れ。目薬も忘れるなよ」 「はーい!」 ……騙された。
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