鬼ごっこ 後日

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教室には何時もより三十分程遅れて着いた。 と言っても人が少ないのは変わらないみたいだが。 さて、予定が少し狂ったが当初やるはずだった事をしようか。 俺の隣の席を借りてこくりこくりと船を漕いでいる伊地知を見やる。 「伊地知」 「……うん?」 「今日の昼空いてるか」 「え……空いてるけど」 「なら行けるな」 俺の言葉に、サッと伊地知が顔を青くした。 震える声で言葉を紡ぐ。 「ま、まさか。……アレですか?」 「どれかは知らないが多分それだ」 「まじっすか……。まさか本気だったなんて」 「行くだろ?」 俺が問いかけると、伊地知は少し固まったあとガクリと頭を下げた。そのまましばらくして「はい……」とか細い返事が聞こえた。 「ま、なんとかなる。と、思うぞ?」 その言葉に、今度こそ完全に脱力してしまった。
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