136人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ
※ ※ ※
今度は消えぬように、学校で女子に刺繍の指輪の作り方を教えてもらう。刺繍糸は赤を選んだ。
「何編んでるの、総一」
「指輪」
秀次と恋人同士になったことは電話で冬弥に伝えた。ゆえに贈る相手が誰なのかは気が付いたようだ。
「で、なんで赤い指輪よ」
それについては指輪の作り方を教えて貰った女子にも聞かれたが、
「赤が好きなんだよ」
とその時に答えたことと同じ言葉を返す。理由は秀次だけが気づけばいいことだから。
「そうだっけ? まぁ、俺は総一が幸せならそれでいい」
しつこく聞いてくることもなく、大事にしろよと肩を叩き、冬弥は自分の席へと戻っていく。
ありがとうな、冬弥。話を聞いてくれたし、報告をしたときも少し泣いていたよな。
そういう優しいところに、俺は心をすくわれている。
大切にするよ。秀次も、それに冬弥との友情も。
昼休みになり、美術室へと向かう。
ポケットには手作りの赤い指輪が入っている。秀次が来たら一番にこれを贈ろう。
椅子に腰を掛けて秀次が来るのを待っていたら、すぐにコンビニの袋を手に美術室へとやってくる。
俺は秀次の側に向かうと、手をとって小指に手作りの指輪をはめた。
「これで消えないだろう?」
と口角をあげた。
「消えねぇけど、恥ずかしいだろ」
小指を動かし、照れながら俺を見上げた。
「お揃いのリングを買うまで、それで我慢して」
いつか本物を、秀次の薬指にはめたいと思っている。つなぎあいたいしな。
「はめねぇからな」
「えぇ、秀次好みの、見つけたんだけど」
とスマホの画面を秀次に向けると、気に入ったか、画面を食い入るように見つめていた。
やはり好きか、それ。
「利刀さんから、お勧めの店を教えて貰った」
「え、利刀? なんで」
利刀さんに教えて貰ったことが不思議なのだろう。そういえば、秀次にはまだ話していなかった。
「実はさ、従兄が利刀のメディカルトレーナーをしていてな。昔は練習を見学しにつれていってもらっていた」
羨ましいって顔をしている。まぁ、プロレス好きからしたら、そういう反応を見せるよな。
最初のコメントを投稿しよう!