君は俺のモノ(総)

9/11
136人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ
 ※ ※ ※  今度は消えぬように、学校で女子に刺繍の指輪の作り方を教えてもらう。刺繍糸は赤を選んだ。 「何編んでるの、総一」 「指輪」  秀次と恋人同士になったことは電話で冬弥に伝えた。ゆえに贈る相手が誰なのかは気が付いたようだ。 「で、なんで赤い指輪よ」  それについては指輪の作り方を教えて貰った女子にも聞かれたが、 「赤が好きなんだよ」  とその時に答えたことと同じ言葉を返す。理由は秀次だけが気づけばいいことだから。 「そうだっけ? まぁ、俺は総一が幸せならそれでいい」  しつこく聞いてくることもなく、大事にしろよと肩を叩き、冬弥は自分の席へと戻っていく。  ありがとうな、冬弥。話を聞いてくれたし、報告をしたときも少し泣いていたよな。  そういう優しいところに、俺は心をすくわれている。  大切にするよ。秀次も、それに冬弥との友情も。  昼休みになり、美術室へと向かう。  ポケットには手作りの赤い指輪が入っている。秀次が来たら一番にこれを贈ろう。  椅子に腰を掛けて秀次が来るのを待っていたら、すぐにコンビニの袋を手に美術室へとやってくる。  俺は秀次の側に向かうと、手をとって小指に手作りの指輪をはめた。 「これで消えないだろう?」  と口角をあげた。 「消えねぇけど、恥ずかしいだろ」  小指を動かし、照れながら俺を見上げた。 「お揃いのリングを買うまで、それで我慢して」  いつか本物を、秀次の薬指にはめたいと思っている。つなぎあいたいしな。 「はめねぇからな」 「えぇ、秀次好みの、見つけたんだけど」  とスマホの画面を秀次に向けると、気に入ったか、画面を食い入るように見つめていた。  やはり好きか、それ。 「利刀さんから、お勧めの店を教えて貰った」 「え、利刀? なんで」  利刀さんに教えて貰ったことが不思議なのだろう。そういえば、秀次にはまだ話していなかった。 「実はさ、従兄が利刀のメディカルトレーナーをしていてな。昔は練習を見学しにつれていってもらっていた」  羨ましいって顔をしている。まぁ、プロレス好きからしたら、そういう反応を見せるよな。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!