真剣な求愛

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「社内の男には興味ない」 「えー、社内は身近で良いですよ。いつでも会えますし。オフィスラブってドキドキするじゃないですか?」 由梨は何かを妄想したらしく両手を胸の前で合わせて、うっとりとする。オフィスラブという響きだけでも酔いそうになっていた。 「会いたくない時も会ってしまうこともあるでしょ? 絶対にイヤよ」 「えー!そんなー。楽しそうなのにー」 現実に戻された由梨は香澄に向かって、唇を尖らせる。その時「朝礼、始めるぞ」という課長の朝礼合図で話は中断する。 「……というわけで、週末に人事異動が発表されるから、各自で確認すること」 人事異動、この会社では女性社員はほとんど異動になることはない。だから、関係ない話だと香澄は思った。 「香澄さん、誰が来るか楽しみですね」 「んー、興味ないわ」 「もう! 香澄さんったら、今日は冷めすぎですよ。やっぱり昨日なにかありました? 昨日はあんなに目を輝かせて意気込んでいたのに。冷めてしまったら、人生楽しくないですよ」 冷めすぎ? 一応結婚というゴールを夢見て、結婚相手に理想を求めているはいるが、変な男にしか会わないから諦めかけていた。でも、それでは確かに楽しくない。 「そうね、とりあえずどんな人が来るか楽しみね」 「そうそう、楽しみにしましょうね! イケメンが来るといいですよねー」 楽しみだとか楽しいと思うようにすれば、世の中少しは楽しくなるに違いない。興味のないことでも楽しみだと思い込むようにしようと香澄は小さな決心をする。 由梨がわくわくドキドキと楽しみに待っていた人事異動発表日がやってきた。ここの会社は古典的な方法で掲示板に貼り出しているが、それがなせが社員にうけている。 異動になる者は前もって内示を受けているが、その他の者は何も知らされていないから、この発表を心待ちにしていた者が多かった。
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