真剣な求愛

2/23
前へ
/165ページ
次へ
*** ここは、化粧品メーカー『白精化粧品株式会社』の広告宣伝部。そこに勤務する板谷香澄は慌てた声を出す。 「うわっ、もうこんな時間!」 このフロアの壁にある丸い時計を見て、急いでパソコンをシャットダウンさせた。そして、カバンにスマホをしまって、立ち上がる。 「いい男をゲットするぞ!」 今夜の合コンへの意気込みに握り拳を上げた。 「板谷、頑張れよ!」と、近くに座る男性先輩社員から激励されて「はい!」と元気よく返事をした。 香澄は元気なのが取り柄の入社五年目の27才。オフィスにすっかり馴染んではいるものの、入社して一年目や二年目の後輩のような初々しさはなく、入社十年目という先輩のようなキャリアもなく、中途半端な位置にいると感じるこの頃。 そろそろ結婚したいなと一般的な女子らしく結婚を夢見るが、彼氏いない歴二年の今、予定がないからとにかく素敵な出会いを待っている。 だけど、待っているだけでは出会いは訪れない。朝から夜までここのオフィスにいたら、出会えるのは同じオフィスで働く人か取引先の人くらい。 でも、同じオフィスの人はなにかと面倒だと思い、恋愛対象から除外している。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

873人が本棚に入れています
本棚に追加