真剣な求愛

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変に真面目な男とナルシストな軽い男が香澄を送る権利で揉める。香澄本人の意思はここにない。 何でこんな男たちとここで立ち止まっていなければいけないのだろう……と顔をしかめる。 「牧瀬くんに任せるなんて出来ません。僕が責任持って送ります。牧瀬くんはひとりで帰ってください」 香澄は冷めた目で自分を取り合う男たちのやり取りを見ていた。香澄たちの横を女子大生らしいグループが好奇の目を向けながら、通って行く。 「ねえ、さっきのふたり、かっこ良くない?」 「それ、私も思った!うん、かっこいいよね。あの人、あんなイケメンに取り合いされるなんて羨ましい」 そんな会話が香澄の耳に届く。 かっこいい?このふたりが? 確かに整った顔立ちをしている牧瀬はイケメンという部類に入るとは思ってはいたけど、一生も? 香澄は真面目な男の顔をまともに見ていなかったなと思い、ジッと見てみた。 それほど大きくはないがメガネの中にある目は二重で切れ長、それに筋の通った高めの鼻とほど良い厚みの唇。なるほど、それなりに整っている顔だ。一般的に見れば、かっこいいと言われてもおかしくはない。 香澄は腕を組んで、納得するように頷いた。しかし、残念ながら性格がよろしくない。そんな分析をする香澄には目もくれない男たちのバトルは続いていた。 「だから、僕が送りますって、先に言いましたから、僕が送ります!」 「分かってないなー、桐山は嫌がられているだろ? 香澄ちゃんだって、そんなヤツに送ってもらうのはイヤなんだよ。俺が送るから心配するな」 「牧瀬くんだから、心配です」 「何度も失礼なことを言うヤツだな。よし分かった、香澄ちゃんに決めてもらおう。香澄ちゃん、どうする? 俺と桐山、どっちがいい?」 決定権は香澄にゆだねられた。勝手に決められては迷惑以外の何ものではない。だけど、自分に意思を尊重してもらえるは良いことだ。
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