迷惑な求愛

2/17
865人が本棚に入れています
本棚に追加
/165ページ
邪魔を出来ない空気……。香澄は一生の気配は背中で感じていて、邪魔するな!というオーラを全開にしていた。そのオーラは一生に対して、効果があった。 「よし!」 予定部分の入力を終えた香澄は両手をあげて、伸びをする。ここまで進めておけば、余程急ぎの仕事が入らない限り、定時で帰ることが出来る。香澄は、早起き出来た自分を心の中で褒める。 偉いぞ、私。 「香澄さん、おはようございます。早いですね」 「由梨ちゃん、おはよう」 由梨が出勤してきたことで、周りを見回す。そして、いつの間にか半分ほど出勤してきていることに気付いた。一生を無視して、集中していたので気付かなかったのだ。 「もしかして、今夜はまた合コンですか? 定時上がりするために早く来たのでしょ?」 由梨はすっかり香澄の行動パターンは熟知していた。 「まあ、そんなとこかな。がんばってるのよ」 香澄は微かに笑う。前回の合コンは最悪だったから、今度こそ!と意気込んでいた。 一生は香澄と由梨の話をこっそり聞いていて、何とか合コンに行くのを阻止する方法はないかと密かに考えていた。 昼休みを知らせるチャイムが鳴る。 「香澄さん」 由梨と一緒に外のカフェに行こうと立ち上がった香澄を一生が呼ぶ。一生の声で名前を呼ばれるのが嫌だが、一応返事をする。 「何?」 「あの!今夜、よろしかったら、食事に行きませんか?」 香澄を合コンに行かせたたくなく考えた阻止方法は自分との食事だった。少々身勝手で浅い考えだが、一生は真剣である。香澄と食事が出来たら、今夜は幸せな夢がきっと見れる。 「予定があるから無理。あー、予定がなくても無理だけど」 「そうですか……」 冷たく答えて、由梨と一緒にフロアを出て行った。一生の幸せなゆめは崩れ落ちる。だけど、諦めない一生は次の阻止方法を考えた
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!