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でも、香澄はその理由を知らない。
「ねえ、香澄。付き合ってみたらいいじゃない? 一生くんみたいな真面目そうな人、そういないし、意外と楽しいかもよ」
他人事である佳菜子は面白い展開になってきたと笑い、ビールの入ったジョッキを傾けた。香澄は余計なことを言う佳菜子を睨んだ。
「お勧めしていただき、ありがとうございます!」
一生は姿勢を正して、真っ直ぐと体を佳菜子に向けて、頭を下げる。自分に味方が出来たようで嬉しかった。
「本当に礼儀正しい人だね。ほらー、香澄。付き合ってあげなさいよー。楽しいと思うわ」
佳菜子はますます面白いと笑う。香澄はそんな佳菜子をますます睨む。どこをどう見て、楽しいと言えるのだか。
「佳菜子。勝手なこと、言わないで」
「香澄さん。僕の取り柄は真面目だけですが、大事にする自信はあります! だから、お願いします」
一生は香澄に向かって、右手を出した。この手を香澄が握ったら、了承したことになる。大胆な公開告白で、頭が痛くなってきた香澄はこめかみ辺りをさする。
ここにいるメンバーだけでなく、近くにいた客までもにことの成り行きを見守られていてここから逃げ出したい気分だ。
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