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近付く求愛
この日は朝から土砂降りの雨。床の濡れる女性更衣室は賑わっていた。
「もう、ベタベタで気持ち悪い」
雨で濡れたストッキングが、足にベッタリと纏わりつく。この気持ち悪さは不快以外のなにものではない。
「えー、 替えがない! 誰か余分に持ってない?」
「あるよー」
ほとんどの女性社員が履き変えざる得なかった。
「あー、スッキリ」
「朝から疲れてしまって、災難ですよね」
香澄と由梨も履き替えてスッキリしたところで、広告宣伝部へと歩いていく。スカートも裾のほうが濡れてはいるが、そこまでの替えはない。自然に乾くのを待つしかない。
始業時間ギリギリに着席。朝礼は週2回行われいて、この日は朝礼がある日だった。課長が伝える連絡事項をしっかりメモする者もいる。一生はそういう者のひとりである。それに対して、香澄はメモをほとんど取らない。
「それと、来週の就職セミナーは桐山くんと板谷さんで行くことが決定しました。ふたりはこのあと、俺のとこに来て。以上!」
最後に一生と香澄の名前をを呼んで、朝礼は終了した。みんなが自分の業務を開始する中、ふたりは指示に従って課長のもとにいく。
「日程表は桐山くんが作ってくれたから持っているよな? 当日のパンフレットは営業部にあるから、必要なら取りに行って。あとはー、そうだ。当日の係も営業部のほうで決められているから、自分たちで確認して。よろしく」
「はい、分かりました」
「はい」
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