雪が綺麗だね

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雪が綺麗だね

「あぁ、さむっ」  今日も道路は真っ白だ。夜の間に降り積もった雪。鼻を赤くさせた私は、マフラーを口元まで上げながら駅へと向かっていた。 「おっはよ、莉乃(りの)!」  背後から名前を呼ばれて立ち止まる。毎朝のように聞いているその声は、すぐに誰のものか判別できた。 「恵美(えみ)、おはよ」  振り向きながら挨拶を交わす。  目の前には茶髪の女子高生。頭の後ろで一つに束ねた髪を揺らしながら、私を追い抜いてしまう。 「最近冷えるよねー」 「ほんとそれ、寒すぎ」  恵美に肩を並べ、言葉を返した。こんな何気ない会話をしながら、毎日登校している。  しばらく歩くと、見慣れた駅舎が顔を出した。家から一番最寄りの駅。平日休日問わず、普段から利用している。  電車が来るまでベンチに腰を掛けて、スマートフォンを眺めることにした。 「……」  昨日送られて来ていたメッセージに返信をしつつ、空を見上げた。  晴れとも曇りとも言い難い微妙な天気。午後からは雪が降ると天気予報では言っていたが、的中しそうな感じがする。 「あ」 「ん?」  隣に座っていた恵美が目をキラキラ光らせている。 「来週クリスマスじゃん!」 「そうだね」 「彼氏作らなきゃ!」 「なんで?」 「なんでって、クリスマスだよ!?」 「ごめん、わかんない」  別に無理して彼氏など作らなくても良いのではないかと思ってしまう。クリスマスなんて毎年あるんだし。  でも恵美にはこだわりがあるみたい。興味の無さそうな私の表情を見て、若干呆れているようにも見えた。 「駄目だねえ、莉乃は」 「なにがよ」 「全然わかってない」 「だからなにが……」 「いい? クリスマスっていうのは年に一度しかない聖なる日なの。それを一人で過ごすなんて、どうかしてるわ!」 「家族と過ごすし……別に良くない?」 「良くない!」  何が恵美をそこまで熱くさせるのか、私には一切理解できなかった。  そもそも恋愛の魅力がいまいちわからない。一人が好きな私からすれば、わざわざ男の子と過ごす時間が無駄としか思えない。  こんな思考をしてるから彼氏の一人もできないんだろうけど。 「あ、電車来たよ」 「ちょ、話まだ終わってないよ~」  そろそろ面倒になっていたところで、目的の電車がホームに停車した。  私はまだ話そうとする恵美を適当にあしらいながら、車内へ入った。
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