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朝、枕元の目覚まし時計が鳴り響く。横になったまま手を伸ばしてアラームを止めた。
カーテンをばっと開き、外を見る。相変わらず雪は積もったまま。それでも上空は晴れやかで、その日差しに照らされた道路は神秘的にすら感じた。
起き上がってスマートフォンの電源を入れる。日付は十二月二十五日。クリスマスだ。
チャットアプリを起動して、前日のやり取りから今日の流れをもう一度確認する。
「まだ時間あるじゃん……寝よ」
私は時間に余裕があるのを知って、二度寝を決断。ただ、たまに寝過ごすことがあるのでアラームはしっかりとセットしておく。
「おやすみ」
そうして、二回目の眠りに就いた。
「んん……ん?」
目を覚ますと、電気の灯っていない部屋がかなり明るくなっていた。
嫌な予感を抱えながら壁に掛かった時計を見る。時針は午後一時を指していた。
「やっば!」
駅で待ち合わせの時間が午後一時半。つまりあと三十分しかない。
慌てて化粧や着替えに取りかかる。幸い昨日の夜に予め支度は済ませていたので、そんなにすることはなかった。
「よし、いってきまーす」
玄関の戸を開いて道路を小走りで進む。かと言って凍った道は滑るため、そんなにスピードは出せない。
「ま、間に合うとは思うけど」
もしかしたら遅れるかもという旨のメッセージを送って、スマートフォンをコートのポケットに突っ込んだ。
「ったく、何が『もしかしたら』だ」
「ごめんって」
駅に到着したのは時間より十五分遅れてからのことだった。
ただ丁度電車が来たので、説教は手短に終わった。
二車両目に乗り込んで近くの席に座る。クリスマスだというのに利用客はあまりいない。これは、田舎の駅のメリットだと個人的に考えている。
四十分後。無事目的地に到着した。駅からは徒歩五分くらいの場所にある水族館。
「お腹空いた……」
「なら先に飯行くか」
迂闊にも本音が漏れていた。凌は特に気にせずスマートフォンで近くの店を検索しているが、私は真っ赤になった耳を隠すのに懸命だ。
「お、近場に喫茶店ある」
「じゃあそこにしよ」
恥ずかしさを紛らわすように私はそう言って、凌と一緒に喫茶店の方へ歩き出した。
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