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僕、青木歩は幽霊が視える。
それも、生まれつき。
その所為なのかそうではないのか、僕は根暗で友達もほとんどゼロだし彼女いない歴イコール年齢の悲しい奴である。
そんな僕が高校に入った直後、先輩に声をかけられたのは何たる奇跡なのか悪夢なのか。
どちらでもなく喜劇だったのかもしれない。
知った時にはすべてが終わっていた話。
苦々しい、青春とも呼べない記憶。
僕が入った高校では部活動が盛んだ。
そんな高校に入っても部活に入るつもりのない僕は、根暗な陰キャなのかもしれない。
部活の勧誘の声とチラシが飛び交う中を歩きながら、ひっそりそんな事を考えていると、いきなり声をかけられた。
「ねぇ、貴方、幽霊視えるでしょ?」
「え?」
振り返ると、ツインテールの美女がいた。
「どういう事ですか?」
僕は思わずそう聞いていた。
「詳しくは、部室で話しましょ」
ツインテールの美女はそう言った。
部室棟の三階、天文部の隣にツインテ美女は入っていった。
僕も恐る恐るついていく。
幽霊が視えるなんて、何でわかったんだろう?
それが知りたくてツインテ美女の後からその部屋に入っていった。
隣の天文部のように何部、とどこにも書いていない。
「ここって何部なんですか?」
僕は彼女にそう聞いた。
「まずは自己紹介をしてから。貴方、名前は?」
「僕は青木歩、一年です」
「そっか。わたしは埜崎ミナミ。二年だよ」
埜崎ミナミ先輩。
他の先輩や先生と顔や名前が混ざらないようにしっかりと覚える。
「あ、ちなみに偽名だからね」
……偽名?
偽名って、偽の名前ということのはず。
「それ、どういう事ですか?」
「ひ・み・つ。それより歩クン、よろしくね」
「あ、よろしくお願いします。それでどういう」
「ここはミステリー研究部、略してミス研だよ」
ミステリー?
幽霊とはいちばん遠い分野に見える。
というか、話をそらされてしまった。
でもわざわざ話したくない事を話させるのも嫌なので何も言わない。
偽名でどうやって学校に入ったのか不思議だけど。
名札もよく見たら埜崎になっているし。
「それでわたし、埜崎ミナミは副部長なのだよ」
「それで、幽霊が視えるって?」
「時間はまだあるでしょ。急がないで」
「はい……」
たしなめられてしまった。
確かに僕は少しせっかちなのかもしれない。
「わたしはね、幽霊が視えるとか未来が予知できるとか、能力を持った人がわかるの」
「能力?」
「そう。テレビでやってるスプーン曲げが嘘なのも簡単にわかっちゃう」
「じゃあ僕が幽霊が視えるのも?」
「入学式でヤバい子がいると思ったよ」
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