16人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「ヤバいって……」
「それに貴方の───って、やっぱナシ」
「そんな気になる所でですか!?」
「いやーごめんね。言ったら歩クンに悪いから」
「言わない方が質が悪い気もしますけど」
「謝るから、機嫌直して」
ツインテ美女先輩の上目遣いは少々破壊的だった。
僕は根暗だから何とも思わないけれども。
二人きりの部室でそんな事をして先輩は今まで大丈夫だったのだろうか。
いや、今まで能力を持っている人に会わなかったのかもしれない。
「それより歩クン、ミス研に入らない?」
「入りませんよ」
「ミス研に入ればさっきの言葉の続き、教えてあげるよ?」
「いや、でも」
「じゃあ、これを言ったらミス研に入ってくれるかな」
先輩はそう言って一息おいて。
──僕の禁忌に触れた。
結局、僕はミス研の入部届を書いてしまった。
先輩は、あれを知っていた理由を何度聞いても教えてくれなかった。
「ミス研に入れば教えてあげるよ?」
だから僕は入るしかなかった。
先輩がどうしてあれを知っていたのか。
それを知るために僕はミス研に入ったのだった。
もしくはただ単に雰囲気に流されたのかもしれない。
道端で首が変な方向に曲がっている幽霊を無視しながら僕はそんな事を考えて帰宅した。
その日の夜。
僕の携帯に<みーちゃん>から電話がかかってきた。
勿論、電話番号もメアドも両手の指で数えるほどしかない僕に<みーちゃん>なる知り合いはいない。
恐る恐る電話に出た。
「やっほー、埜崎ミナミだよ!」
一瞬切ろうかと考え、でもそれはさすがに失礼だと考え直して僕は答えた。
「何で僕の電話番号知ってるんですか?」
「先生に聞いたの。忘れ物したから教えてって」
おい教師、個人情報の保護はどうした。
「それで何の用なんですか?」
「幽霊が視える貴方に、とっておきの情報を」
「はい?」
「幽霊は、未練の対象がこの世にある限り成仏しない」
「……」
「じゃあ歩クン、おやすみ」
僕の声が出ない間に電話は切れていた。
埜崎先輩は、すべてわかっているんだと知った。
次の日の朝、僕は嫌な夢を見て目が覚めた。
夢の内容は覚えていないのに、既視感を覚えていた。
貴方の──。
先輩の言葉が頭の中をぐるぐると回る。
放課後、部室に行くと、先輩しかいなかった。
「埜崎先輩、失礼します」
「ん、失礼される。あと、ミナミでいいよ」
「じゃあ、ミナミ先輩、あの」
「話は珈琲を飲みながらにしない?」
「……はい」
最初のコメントを投稿しよう!