ミナミ先輩は嘘が嫌い

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 部室に完備されていたコーヒーメーカーで珈琲を二人分淹れて、のざ、ではなくミナミ先輩の前に置く。 「先輩、それで僕も……その幽霊は視た事がありません。でも、先輩は幽霊が成仏してないってわかるんですか?」 「能力は主に二種類に分けられる」  先輩はそう切り出した。 能力は、確か先輩が見分けられると言ったものだった。 「一つ目が先天性のもの。歩クンとかはそうだね」  先天性、生まれつきという事だろう。 でも、それがその幽霊の話にどう繋がるのか。 「二つ目が後天的なもの。主に、想いが強くなったりして発生する」 「想い?」 「そう。その幽霊の想いはわたしでさえ視えるほどに強かった。それだけね」  想いが、強い。 そして、それは、きっと、僕に対して。 僕は。 「歩クン、貴方は気にする事はないよ」 「……知っていて、そう言えるんですか」 「その能力は、確かに強いけど今は人に危害を与えられるレベルじゃないから」 「そういう事じゃないんです」 「わかっている。貴方にとってはその想いが、幽霊があること自体が問題だもの」  僕は、今も。 「罪があったとしても罰を受けなければいけない訳じゃないよ」  僕は、今も、彼女の。 「歩クン、貴方に罪を負う義務はない」  僕は、今も、彼女の、想いに。 「……歩クン、貴方は悪くない」  とん、と。 いつの間にか席を立っていた先輩が僕の肩に手を置いた。 いつの間にか溜めていた息をゆっくり吐き出す。 「歩クン、日曜日おでかけしよっか」 「え?」 「わたしのショッピングに付き合ってくれない?」 「えっと」 「良い事教えてあげるよ?」  またしてもこの言葉に釣られて僕はミナミ先輩とショッピングすることになった。  日曜日。 集合場所は駅前の変な形のオブジェだった。 そのオブジェの前で待っていると、先輩が集合時間から十分ほど遅れてやって来た。 ずいぶんと個性的な服だ。 走っている所為でツインテールが風になびいている。 「ふう、ごめんね歩クン」 「大丈夫ですけど」 「じゃあ行こっか」 「はい」  電車に揺られて十数分、駅を出るとすぐ前にショッピングセンターがあった。 建物が三つに分かれていて、服から電化製品まで買える大きなショッピングモールだ。 「ショッピングセンターなんて久しぶりです」 「わたしは毎週のように来てるよー」  毎週来るとポイントでも貯まるのだろうか。 僕がそう言うと先輩は何故か爆笑した。 そして、 「ショッピングは女の子の趣味なのよ」  と言ってからまたお腹をかかえて笑った。 その後はいろいろなお店を練り歩く先輩についていき試着した先輩に「似合ってます」と言ったりした。 良い事は「また明日」と教えてもらえなかったけど、平和な日だった。 あと、美人な先輩を連れている所為で周りの視線が痛かった。
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