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しばしの沈黙の後、
「バカだな、お前。もしか俺が浮気するとでも思ったか?」
とびきり穏やかな笑みと共にそう言った。
「浮気って……」
それじゃまるで俺たち恋人同士みたいじゃねえか――言葉にこそできないままで、だが視線でそんなふうに訴えれば、遼二はまたもやわらかに微笑んだ。
「くだらねえ心配いらねえよ。女どころか、男だろうが誰だろうが、俺はお前しか眼中にねんだから」
「……なに……言って……」
「マジだぜ」
言葉通りの真剣な眼差しが射るようにこちらを見つめてくる。じっと――見つめられ過ぎて耐えられなくなるくらいに重ねられた視線をどちらからとも外せない。
大きな掌が包み込むように頬に触れ、そのまま顎先を掴まれたと思ったら、クイと顔を交互するように近付けられて唇に軽いキスが落とされた。
「――する?」
「……え?」
「お前の見た嫌な夢を取っ払ってやるよ」
「……ッ」
いきなり強く抱き寄せられて、今度は濃厚極まりない口づけの嵐だ。今の今までの穏やかでやさしい視線はもうどこにもなく、激しい雄の欲情をまとった男が自らを抱き締める。
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