エスコート

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「この赤い点はなんだ?」 小笠原諸島近海で訓練航海中のアメリカ海軍第七機動艦隊の作戦司令部で、空母のレーダーに映り込んだ複数の赤い点を指さしながら、艦長が兵士に問いかける。 特に非常事態を知らせる信号などは受信していなかったが、気になった艦長が訓練も兼ねて赤い点の正体を確認させた。 「先頭の点は旅客機です。アメリカン航空機で、このまま羽田空港に着陸するものと思われます。その他は……現在確認中です」 左手で頭をかきながら艦長が頷く。 「艦長、演習を終了したF-35が着艦許可を求めています」 インカムを付けた兵士から問いかけられた艦長は、「着艦させろ」と返し、数分後には無事に訓練を終えたF-35戦闘機が続々と空母へと戻り、着艦している。 その時、赤い点を確認していた兵士がなにやら緊張した様子で艦長に声をかけた。 「艦長、横須賀の司令部から緊急連絡です」 相手の音声がスピーカーから聞こえるようにと指示を出し、自身も横須賀司令部と会話をするために、艦長席に放り投げてあったインカムを素早く装着する。 「つなげ」 艦長の指示で空母と横須賀基地との通信が開始された。 「ロナルド・レーガン艦長です。横須賀どーぞ……」 年齢的な問題もあり、2019年いっぱいで艦長の座を退く事が決まっているジョン・クルーガー少将は、少しだけ渋い顔をして葉巻を灰皿に押し付けた。 今年で前線から退いて、来年は日本でオリンピックを満喫するのを楽しみにしていた少将にとっては、争い事はあまり歓迎された事柄では無かった。 「アメリカン航空機からのエマージェンシーコールを受信した。そちらのレーダーでも確認できるか?」 横須賀からの緊急通信に、「確認している」と返事をしたクルーガーは、戦闘機の管制官に緊急発進待機中の機体とチームを訪ねた。 横須賀司令部との通信中という事もあり、管制官はクルーガーにそっと耳打ちした。 スピーカーから聞こえる音声は、旅客機からのエマージェンシーコールの概要だ。 「発進させろ」 耳では横須賀からの通信を聞き、口では戦闘機の発進を指示する。 つまり、それだけ状況が切迫していると言う事だ。
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