こわい

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こわい

『こりゃまた……いったいなんの騒ぎだ!?』 母屋の方から騒ぎを聞き付けた奴等がぞろぞろと入ってきた。 『松島様!?なぜこのような場所に!? ってお前らはなんだ!?賊か!?』 騒いで居るのは家主のゆきのの親父だ。 『ん?お前の顔は見覚えがあるぞ? 確か庭師の茂吉の弟子だろ? なんだってこんな時間にここに居る?』 んげ。 バレた。 『それにこの見るからに怪しい男はなんだ? ………さてはこの男と我が邸に忍び込んで盗みを…』 『はぁ、ヤレヤレ。 割りに合わねぇことやっちまったか?』 烏が皮肉混じりに笑った。 『お父様、この方は私を助けてくださったのです。』 『なんだと?』 ゆきのがヨロヨロと父親の前に立ち 俺達を庇ったのだ。 『松島様が離れに迷いこまれて、私は驚いて発作が出てしまったのです。 その時、偶然通りかかった茂虎とこの方が塀を越えて助けに来て下さったのです。 けして盗みなど……』 『助けただと?』 訝しげに俺達をジロジロ見てきた。 『……ゆきのさんのおっしゃる事は本当ですよ。』 松島と思われる、男がスイッと前に出た。 歳は30手前くらいか? 烏より若干歳上だろう。 ゆきのの親父とは違って(まげ)を結っておらず かといって俺の様にザンバラ髪ではなく きっちりと前髪は上にあげて、油かなんかで固めてある。 着物ではなく、洋服って奴をきっちりと着こんでいた。 茂吉のジジイが言ってた。 本当に金持ちの奴は、この洋服ってモンを好んで着ていると。 『私がゆきのさんを驚かせてしまったのが悪いのです。 葉山殿、申し訳ございません。』 『い、いや……そんな。松島様が謝られるなぞ…』 ゆきのも目を丸くして、成り行きを見ている。 『処置は実に見事でした。 ゆきのさんを一目見るなり指示を出し 直ぐに回復させておりました。 彼は本物の医者ですよ。』 『そ、そうなのですか?これはまた失礼を… ぜひお礼をさせて下さいませ。お医者様。』 『はっはっは! 分かればいーのよ、分かれば~♪』 か、(カラス)の奴……驚くほど単純だ。 鳥頭かよ。 ん? ゆきのがそっと隣に下がってきて 俺の手を握ってきた。 『どうした?ゆきの。』 『茂虎………私……あの男が…………怖いです…』 ゆきののこんな声、初めて聞いた。
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