約束

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約束

庭に赤い花が咲いていた。 思わず手を伸ばすと、少し触れただけで花がボトりと落ちてしまった。 『あっ………』 そんなつもりじゃなかった。 少し触れて、香りを知りたかっただけなのに。 『なにしてんだ?』 聞きなれない子供の声がした。 声の方を見ると、木の箱を肩に担いだ 私と同じ歳くらいの男の子が立っていた。 『ちょっと触ったら花が……落ちちゃって……… ごめんなさい…』 私は咄嗟に謝っていた。 『花ってそれ、椿(つばき)だろ? そんなもん、ほっといても落ちる。』 『ツバキ……』 『なんだよ。花の名前も知らないのか? 女のくせに。』 その男の子はヨモギ色の汚れた着物で 頭に手拭いを巻いていて キリッとつり目気味の目は不思議な色をしていた。 おじい様が時々お土産にくれる、丸いあめ玉みたいな綺麗な水色。 空の青の様な、優しい色。 鼻筋もスッと通っていて 今まで見たどんな人とも違っていた。 綺麗な子。 ほうっと見とれていると、その子は木箱を下に置き 地面に落ちた赤い花を拾うと 『ほら。こうすりゃいい。』 赤い花を私の髪の毛にかんざしの様に挿したのだ。 『あ………あの……』 同年代の男の子と話す事すら初めてで とにかく、とにかく 胸がいっぱいになった。 『全然似合わねぇな。』 『!!』 泣きそうになった。 『お前には白い花が似合う。』 『白い……花?』 『あぁ。椿もいいし 牡丹(ぼたん)でもいいな。』 『俺が一人前になったらこの庭に植えてやるよ!』 『………………あの…』 『ごらぁあああ!!お嬢様になにぬかしとるか!! この小わっぱがぁあああ!』 『!も、茂吉(もきち)!!』 『ギャアアア!いってぇ!』 庭師の茂吉の飛び蹴りが炸裂した。
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