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(あっ…!)
とあるドアのプレートに【澤井家新郎様控室】の文字を見つけ立ち止まる。
(此処か)
あがる息を整えながらドアをノックしようとしてほんの少し躊躇った。
(ドア、ノックして……それからどうするの?)
勢いのまま飛び出したはいいけれどここに来てほんの少しだけ頭が冷静になった。
そんな時間が数十秒──……
「あれ、恵梨花?」
「!」
掛けられた声にドキンと胸が高鳴った。
「おまえ、こんな処で何やってんの」
「あ……由隆」
其処にいたのはてっきり部屋の中にいるだろうと思っていた人物で、今、まさに会いたかったその人だった。
「なんだよ、顔色悪いな。何かあったか?」
「え? ……由隆こそなんでこんな処に」
「トイレ行って来たんだよ」
「あ……そう」
「ん? どうした」
「だから……その……」
「……」
(気が付いて、決意して此処まで来たんじゃなかったの?)
心の中で何度もそう叫んでいる。
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