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「こんな処で何してるの?」
「!」
結婚式場の庭園の隅にある東屋で物思いに耽っているところで急に声を掛けられ驚いた。
「もしかして泣いてるの?」
「……どこに目つけてんのよ。泣いてなんかいないわよ」
声を掛けて来た男には見覚えがあった。式場に着いて受付を済ませる時、其処にいた男だった。
確か由隆の会社の同僚で友人だといっていた。
「あのさ、君、恵梨花ちゃんだよね」
「初対面なのに馴れ馴れしいわね。誰が名前で呼んでいいっていった?」
「わっ、噂通りの毒舌姫だね」
「はぁ? なんですって」
「由隆から色々話を訊いていたんだよ。それに今日、生の君を見た他の連中も姫だ、毒舌だって噂していたよ」
「……」
(由隆の奴……どうでもいい連中に私のことを吹聴するな!)
先刻まで考えていたことに対して感じていた不機嫌さに更なる不快感がプラスされて私の苛々は大きくなっていた。
「ねぇ、君、由隆が好きだったの?」
「は?」
「悪いけど先刻の由隆とのやり取り訊いちゃったんだよね。オレ、由隆の少し後ろにいたんだけど、君、全然気が付かなかった?」
「……」
(全然気が付かなかったわよ)
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