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そんな“アイツ”との出会いは、その日の昼休みに訪れた。
昼食用のパンを買いに行って、教室まで戻る廊下を歩く。だが1人ではない。
入学してまだ数日しか経ってないのに、俺の周りには早くも気さくに話せる女子の友達ができていた。今は、両端を派手めな私服に身を包んだ女子2人に挟まれている。あ、ちなみに俺の通う高校は私服校だ。
「葵く〜ん、パン何買ったのぉ?」
「ん〜、サンドイッチ。卵サンドとフルーツサンドな」
「え〜、真美のおにぎりと交換してよぉ」
「ん〜、明太子ならいいぜ」
「真美、辛いのむりだも〜ん」
「てか葵くん、今日の放課後ひま?真美と計画してたんだけど、女子集めるから一緒にカラオケ行こうよ」
「おーいいな。可愛い子頼むよ」
「わかった!葵くんに気のある子ばっかり集めるから!」
「マジで?」
「葵くん、早くも女子の間で人気高まってるから、今後大変だよ〜?覚悟しておいてよね」
「ははっ、嬉しいなぁ」
クラスの中心的な立ち位置になる女子2人に、肩を抱かれ、腰に腕を回され、側から見たらハーレム状態で廊下を突き進む。
もしかしたら第1号の彼女が今日できるかもしれない。俺の高校生活は文句無しの薔薇色だなぁ。
内心うはうはで、階段を登ろうと1段目に足をかけたその時。
「危ないっ」
「へーー?」
真上から声がした。
反応が遅れた俺の視界に、黒い影が思いっきり迫って来てーーどかっとぶつかってきた。
きゃあっと、女子2人の悲鳴が響く。
俺の体にずしりとした重さがかかり、その体を支えきれなかった俺は一緒に後ろにぶっ倒れた。
「ーーっ、…い、てェ〜」
「……ごめん、大丈夫?」
後頭部をさすりながら目を開ける。
涙で滲んだ視界にまず映ったのは、綺麗な顔をした女子のドアップだった。
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