『失踪』

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3本のヘアピンで留めてある前髪に触れて、俺はぎこちなく笑う。 「ヘアピン使ったの初めてでさ〜、伊月みたいにあんまり上手く出来ないな。あ、けどこのヘアピンって妹の私物だろ?返すよ」 「あげるよ。妹が放置して使ってなかったやつだから」 と言った後、伊月は笑みを浮かべた。 「似合ってるし」 「……!」 第2攻撃。 不意打ちの笑顔を食らった俺は早くも瀕死状態だ。 なんなんだよぉおお!!今日は機嫌よすぎじゃね!? 「男でヘアピンってどうかと思うけど、葵は似合うな。イケメンって何でも似合うんだな」 マジで!今日は!どうした伊月!! 「?どうしたんだ葵、顔が真っ赤だけど」 「…っ、な、何でもねー…」 キュン死という大ダメージを与えていることに気づいていない伊月は、不思議そうに首を傾げる。 俺は胸元を押さえて、「ははは…」と病弱な笑い方をした。
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