『出会い』

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『出会い』

○五木葵.side○ 俺が“アイツ”の存在を知ったのは、高校の入学式から数日後の教室でだった。 「え、苗字と名前が同じ奴?」 予鈴がなる前の朝の教室。 俺、五木葵(いつき あおい)は女子からもらったお菓子の箱からポッキーを2本口に咥えた。 「ああ。つっても、苗字と名前が逆な、逆」 「なるほど。アオイイツキってことか」 目の前の席に座ってる高槻透吾(たかつき とうご)は、入学式の時にトイレの前で出会った。 式がもう始まるっつーのに、お互いのんびりトイレに向かっていて、トイレで「式だるいよな〜」とか「かわいい子いた?」とか話してたら流れでLINE交換して別れて、式終わって教室でまた再開して、いつのまにか仲良くなってた。 朝ごはん代わりのメロンパンを齧る透吾に、俺はにや〜って笑う。 「へ〜〜、その子かわいい?」 「女子前提かよ。男だよ、おーとーこ」 「うわー、つまんねー。興味ないわ」 机に乗り出していた上半身を引いて、今日の朝ごはん代わりになるポッキーをポリポリ齧る。 「葵、おまえってマジ女の子好きな」 呆れ笑いを浮かべる透吾に向かって、俺は眉根を寄せる。 「は?当たり前だろ。つか女の子嫌いな男がいるかよ。…ハ!まさか、透吾おまえっ…」 「何引いてんだよ、妙な勘違いすんなアホ。俺、上に姉が2人いるんだよ。だから女の本性っつーか、だらしない部分知っちゃってるから、お前みたいに綺麗な夢見ないしガツガツしないの」 とか言って大人ぶる透吾に、「ふーんポッキーいる?」と中途半端に折れたやつを差し出す俺。 透吾はため息をついて、メロンパンの最後を口に入れ、俺のポッキーは無視した。
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