『恋の始まり』

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『恋の始まり』

○五木葵.side○ それからは、もう遠慮のカケラもなかった。 朝のおはようメッセージ。(返信ないけど) 登校した伊月を捕まえておはようの声かけ。(最近は無視されるけど) 昼休みは教室まで行って誘う。(その日がお弁当でも学食でもべったり付いて行く) 放課後は一緒に途中まで帰る。(つっても家が逆方向だから、最近は商店街を抜けたとこで別れる) 夜はおやすみのメッセージ。(これまた返信ないけど) とにかく、そんな感じで2週間が経過したーーある日の昼休み。 「ぶっははは!葵、その顔どーした!」 教室に戻って来た俺を見て、透吾が爆笑する。 俺は不機嫌だった顔をさらにむすっとさせて、自分の席に座った。 「…別に」 「めっちゃ赤くなってんじゃん。ビンタされたんだろ〜。何?ついに女子にキレられたか?だから気安く尻を触るのはやめろって言っただろ〜」 「ちげーよ。女子は関係ねぇし」 頬杖をついてそっぽを向いている俺に、前の席を借りて座った透吾が言う。 「なんだよ、じゃあ誰にやられたんだ?あ、わかった、その子の彼氏に殴られたんだな」 「…伊月にやられた」 ちらっと透吾を見ると、ぽかーんとしていた。 「マジ?青井伊月にやられたのか?そういやお前、最近アイツのこと虐めてたもんなー」 「はあっ?虐めてねーし!伊月は友達なんだよ、トーモーダーチ!」 「あ、あぁそうなのか…ごめん」 思わずムキになって叫んだ俺に、透吾は苦笑いを浮かべた。
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