『猛アタック開始』

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『猛アタック開始』

○五木葵.side○ 「ふ〜ん」 …痛い。彼女からの視線が凄く痛い。 休み時間の誰もいない体育館裏で、俺は高2の時に付き合い始めた同学年の女子、茂響子に思い切り睨まれている。 響子は壁に背を預け、腕を組み、パンツでもその細さが際立つモデルのような美脚をクロスさせて、真っ正面に立って縮こまっている俺に、いつもより低い声で言った。 「春休み中ずっと無視されてて、新学期の今日呼び出されたかと思ったら…好きな人ができたから別れて欲しい…ね」 「…は、ハイ…」 「ふ〜〜ん」 伊月の『ふ〜ん』の倍は冷たいな…。 「相手は、あの青井伊月かしら」 「…え?」 響子ははぁとため息をついて、いつも綺麗な長い髪を軽く手で後ろに払う。 「…とっくに気づいてたわよ。葵が彼に好意を寄せていたことくらい」 「えと、それは俺と伊月が腐女子たちのカップリングにされて、いろんな噂を流されてるからじゃないか?」 ちなみに、腐女子たちの中での俺と伊月の設定は、俺×伊月で俺の片想いらしい。 「違うわよ。あのね、彼女らしいことあまりしてなかったけど、私は一応貴方の恋人で、何度かセックスだってしたのよ。そんな私が、葵の気持ちが誰に向いているかを分からなかったと思ってるの?」 響子はむっとして俺に詰め寄り、細い指先をビシッと鼻先に突きつけてきた。 俺は僅かに背を反らす。 「セックスの時なんか、私のことを好きな相手に置き換えて抱いてなかった?口パクが私の名前を呼んでなかったわ。バレバレよ」 「ま、まじ…?そんなことまで分かってたのか…?」 「当たり前よ。男がセックスの快楽に夢中になってても、女は割と冷静なのよ。浮気なんてすぐバレるわ。覚えてなさい」 本当に同い年なのか?響子が年上の女性のように思えてきた。
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