第2話 大英雄アーク

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第2話 大英雄アーク

「我ら人間は魔族に対抗しうる知恵を身に付けた。武器を手に取った。運命に抗う術を知った――しかし私は思う。魔族と殺し合う事が我々の本懐なのかと」 アークは同族に、声高らかに問うた。 「そして魔族にとっても我々人間の絶滅が本懐なのかと。故に私はこの剣を手に取った」 後に「大英雄」と後世に語り継がれる男はその手に剣を掲げ、天に叫ぶ。 「我が剣は命を奪うだけに非ず。我が剣は天への誓い。我が誇り。そして我が命――この命一つだけを携え、私は旅立つ。永らく続く無益な争いを終わらせる為に」 その後アークは己の言葉通り、魔族の住まう根城へと旅立った。 彼の志に賛同する、ほんの僅かな友らと共に。 「それはあまりに無謀過ぎる、愚かしい行為」 そう噂する口さがない人間も少なくなかった。 否、口には出さずとも多くの人間がそう思っていた事だろう。 しかし旅立ちから一年後、アークらは無事人間の国へと帰還した――魔族との【法条】を携えて。
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