第4話 セレネ

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第4話 セレネ

魔族が住まう国セレネは人間の領土ヘリオスの北部に在る。 【魔族の住処】と聞くだけでさぞおぞましい、絵物語の世界にある様な血生臭い風景なのでは?と想像する者も少なくない。 しかしそれは国交が疎遠化している故、口伝にて語り継がれて来た真実に妄想・偏見・脚色の手垢がこびりついた結果である。 実際のセレネはヘリオスとさして変わらぬ様相の国だ。 昼は太陽が大地を照らし、夜には月と星空が広がる。 鮮血の川や噴火を続ける山々、常人では五分と息を続ける事の出来ない毒臭気――などという物は一切存在しない。 ヘリオスと決定的に違う事と言えば、国土に対しての人口比率だろうか。 魔族との恒久的停戦を果たしてから、人間は爆発的にその数を増やして来た。 間引きされる事がなくなったのだから、当然といえば当然だ。 そして人口が増えるに伴い人々は土地を開墾し、生活域を広げ続けて来た。 一方の魔族は人間と比べ圧倒的長命種族である代わりに、繁殖力が極めて低い。 故に生活域を広げる必要もなく、国土の大半は手付かずの大森林だった。 そんなセレネの中央付近に、魔族の王ヴェルフリートの居城はある。
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