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マンションから飛び降りていなくなりたいと思っていた駿斗はもういない。今は理津への愛情で満たされたじぶんがいるだけだ。
「理津が好きなんだ」
そう気がついてしまったからには彼を手に入れたかった。跪き愛を乞う。
「お前といることが楽しくて幸せなんだ。この先も一緒にいてくれ。友達としてじゃなくて、恋人として」
まるでプロポーズのような響きを持つセリフに理津は真っ赤になってモジモジとしている。そんな仕草も可愛くて愛おしくて仕方ない。差し伸べた指先をキュっと掴んで理津はボソリとつぶやいた。
「マジで?」
「マジだよ。今までなんで気がつかなかったのかわからないくらいだ」
「……嬉しい」
囁くような声が駿斗へと届く。
「おれも駿斗のことが好きみたいだ」
今までだって隣にいた。ずっとそばにいたのに「好き」という言葉を経てからの愛おしさの倍増は今まで味わったことのない喜びだった。
やっと誰か、特別な一人を手に入れることができたのだ。もうひとりぼっちじゃない。駿斗の隣を歩いてくれる人がいる。
悪態をつきながら去っていくクラスメイトなんかもう目に入らなかった。
これから理津は、親友じゃなくて恋人ととして駿斗のそばにいてくれるのだ。幸せってこういうものなのかと駿斗は胸を抑えた。
だけど、その幸せな気持ちにはどこか陰りが残ったままなのも駿斗は知っていた。
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