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マンションの12階から覗く地上ははるか遠く、ベランダから見下ろす景色はどこか浮世離れしている。
両親と三人暮らしのはずが実質一人暮らしのようなこの生活も実態を持たない夢現のようなものだと真藤駿斗(しんどうはやと)は息をついた。
もしここから飛び降りたって悲しむ人がいるとは思えない。
中学に入って新しい環境にも慣れて、それなりに友達らしきものも先生からの信頼も勝ち取っているけれど、どれもが駿斗を満たしてはくれない。別になくてもかまわないし、あったところで何かがあるわけでもない。ただ両親を満足させてやるためだけに手に入れただけだ。
「痛いのかな」
ベランダの柵を乗り越えてちょっと身を前に倒すだけで全部終わる。地面に叩きつけられる頃には多分意識もない。
飛んでから少しだけ空気抵抗で体は痛むだろう。でもそれもあっという間だ。すぐ終わる。その先どうなろうとも駿斗にはもうわからない。
「……まあ、やらないけど」
そんなことをしたって何の解決にもならないし、駿斗を助けてもくれない。終わったところで未来はないのだから、やるだけ無駄だ。それくらいなら勉強をしっかりやってそれなりに過ごしやすい環境を整えて大人になればいいだけのこと。
真藤駿斗14歳。
生きている意味が分からない。
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