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高校に進学してからも、元気で人懐っこい理津は男女かまわず誰からも好かれ、常に彼の周りには人が集まる。それは親友としてそれは誇らしいようなちょっぴりさみしいような変な気分だった。
もちろん高校に入ってからもぐんぐんと背が伸び続けた駿斗だって、かっこよくて賢くて優しくてスポーツができて最高! と何度も告白を受けている。断るたびに「なんで付きあわないんだ?」と不思議がられるけど、特定の彼女を作る気にもなれないしそもそも興味もなかった。
それだったら理津やきょうだいたちと放課後を過ごしているほうが楽しかった。これからの生活のためのお金を稼ぎたくてバイトも忙しかったし、恋愛が入り込む隙間はどこにもなかったのだ。
そんな駿斗に変化が訪れたのは高校三年の時だった。
蒸し暑い日だった。
放課後一緒に帰ろうと約束をしていたのに、先生の呼ばれたからと理津は遅くまで残った。先に帰っていてもいいと言われたけどなんとなくぼんやりと彼を待ってしまった。
ペタペタと足音が聞こえたかと思うと、駿斗じゃない、他の彼かが理津を呼んだ。
「話があるんだけど」
やけに張り詰めた声をしてるなと声の出先を探すと、ちょうど靴箱のところで理津が誰かと対峙している。相手は同じクラスの奴だった。
最近やけに理津のそばに張り付いている男だ。声がでかくて騒がしくて、駿斗が苦手なタイプ。
「理津のことが好きなんだけど」とそのクラスメイトは口にした。
(は?)
聞かないふりはできなくて、じっと物陰から二人の様子を盗み見る。告白なんてされ慣れているけど、理津が誰かにそういう目で見られているのはすごく気分が悪い。
「うんと、おれも、好きだよ?」
困惑した理津の声に、違うだろ、と叫びたくなる。軽々しく誰にでも好きとか言うな。
「俺のものになってよ、理津」
固い声がそう言うと、突然理津に抱きついた。小さな理津はすっかりと抱きしめられている。
頭に血がのぼった。
わけがわからなくなって、思わず突き進んだ。理津を抱きしめている男の首根っこをムズっとつかむとそのまま放り投げた。見つかったとニヤニヤと気持ちの悪い顔で笑うな。腹の中で何かが煮えたぎっていく。
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