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「んだよ、空気読めよ」と照れ隠しのような声を出すその男をぶっ飛ばしてやりたいくらい憎んだ。俺の理津に触るなと叫びだしそうになる。
「ちょっと理津に話があるんだからさあ」
さらに先を続けようとするクラスメイトを睨みつけて、声に出して言っていた。
「勝手に理津に触んな」
ぽかんとした理津の顔が視界の隅に入った。
これ以上奴を近寄らせたくなくて、バリケードのように腕を張って理津を守る。
「なんなの? そうやってるお前こそ、理津のことが好きなんじゃねーの?」
ニヤニヤと笑いながらからかうように告げられた一言が、駿斗の中でピタっと収まった。何か今まで大事なところが抜け落ちていたものがピタリとはまったかのようにスッキリとする。
「そうか……」
やっと腑に落ちた。
理津に対して抱いてきた思いは「恋」なんだ。
大切でずっとそばにいたくて、理津のいない人生なんて考えられなくて。一人ぼっちの場所から明るい場所へ連れ出してくれた理津とこの先もいたいから。変わろうと思ったのは理津が「好き」だから。
理津だけが俺の大切な場所にいる。
「どうやらそうみたいだ」
なんで気がつかなかったんだろう。
理津にだけ感じる特別な思い。家族以上に大切な存在。理津。そうか、理津が大好きだ。
「好きだ、理津」
そう口にすると、空虚だった場所が明るく輝いていくのがわかった。理津が好きだ。それだけでこの先の未来は幸せに満ちていく。
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