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幸せだと思う気持ちに反比例するように今までごまかしてきた昏い気持ちも蘇るようになった。
理津やその家族といる明るさと正反対の冷え切った駿斗の家庭。それを理津に知られるのは怖かった。誰も迎えてくれる人のない家。ひとりぼっちの食卓。
両親に愛されていない駿斗を理津はずっと愛してくれるのだろうか。
この先も一緒にいたいということは、理津からあの家庭を奪ってしまうことにならないだろうか。
きっと理津は気にしすぎだと言って笑うだろう。だけど駿斗の抱える闇を理津に理解されるとは思えなかった。
一緒にいれるだけで楽しいというのは本当だし、放課後にいつものように理津の家にお邪魔するのも嬉しい。だけどその分別れてからのさみしさが募る。なぜ自分ばかりがこんな薄暗い部屋に閉じ込められなきゃいけないのか、なぜ両親は駿斗を愛してくれないのかと、今まで押し込んできた絶望が心の奥底からあふれ出してくる。
幸せと苦しさのはざまで駿斗はどうにかなりそうな恐怖を抱えた。
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