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「好きだよ、理津」
「……」
「ほんとに好きだ、大好きだよ」
一緒に未来を歩いていきたい。一人にしないでそばにいてほしい。
今にもほとばしりそうな激情は言葉になって理津に伝わった。
「……今から行ってもいい?」
「え」
「駿斗の家。住所教えてよ」
土砂降りの雨が窓を打つ。
「なに、言って。すごい雨だし」
「決めた。行くわ。住所早く教えて」
駿斗は落ち着きなくあたりを見渡した。
分厚い雲に覆われて薄暗い夕方。出てすぐに全身ずぶぬれになるほどの強い雨。こんな中理津は来るというのか。
「うちは、ダメだ。ごめん」
「だめじゃないんだよ、駿斗。いいから教えろ」
「理津、雨すごいから危ないし」
「いいから!!」
こんな理津の怒鳴り声を初めて聴いた。迷って駿斗は住所を伝えた。まさか本当に来るはずがないと言い訳をして。
「今すぐ行くから待ってろ」
乱暴に電話は切れ、理津との回線が切れた音がいつまでも受話器から流れている。
「うそだろ」
あんなに見られたくないと思っていたのに、来るという理津の声に慌てて駿斗は立ち上がった。急いでスニーカーを履いて外に飛び出した。理津の家からここまでは20分くらいだ。
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