私の秘密

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私の秘密

 夜は私にとって、自由と冒険の時間だ。  窓を開けると夜空には、月が怪しいほど美しい輝きを放っている。 おでかけには絶好の夜だ。  私は首につけた黒いチョーカーに触れる。チョーカーの真ん中には ラピスラズリのような、ブルー系の貴石がついている。本物の貴石なのか、 イミテーションなのかはわからないけど、ちょっと不思議な力をもってるの。 これが私の秘密。  チョーカーの石に触りながら目をつむる。石に触れた手が熱を帯び、 ゆっくりと体全体に伝わっていく。その温もりは心地良く、私の体と 心を少しずつ溶かしていく。この温もりに身を任せてしまいたい……。 もう何度も経験してるけど、この瞬間はちょっと気持ちいい。  これが変身の合図。 溶けた心と体は青い石と共に、ブルーの閃光を放ち始める。 それは全身へひろがっていき、私の体を包み込む。青い光は私の体を 心地良くほぐし、変幻させていく。体と手足が縮まり、黒い毛に 覆われていく。私の体はどんどん変わる。  最初はすごく怖かったけど、今もうこの瞬間が楽しい。  光が消え去ると、私は黒い猫へと変身していた。  これが私の秘密。チョーカーは私の変身アイテム。  最初は「なんで魔法少女じゃないの? 変身っていったら魔法少女でしょ? 魔女っこでしょ?」って思ったけどね。 でも誰かを救ったり、ほうきに乗ってひとりで働いたり、ましてや 戦ったりするのなんてごめんだもの。猫のほうがずっと気楽。  猫の姿で真夜中の散歩をするのが、親を亡くしてひとりぼっちになった 私の唯一の楽しみなのだ。
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