完璧なアリバイ

1/10
148人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
雨上がりの道はところどころ陥没しているところに水が溜まっていて、通い慣れた通学路でも下を見て歩かなければならない。 アスファルトで舗装されているのにこんなにデコボコなのは、年度末に予算を消化するためだけに掘り起こしては埋めているからだ。行政がそんなバカげた税金の使い方をしているせいで、道路は継ぎはぎだらけの服のように濃いグレーと薄いグレーに分かれている。 その繋ぎ目の水溜りにさっき学校指定の白いスニーカーを浸けてしまった私は、日差しに反射して光る道路の凹凸に目を凝らしながら歩いていた。 「あいつら、また来てる。」 隣を歩く光一郎が忌々し気に呟くから私も顔を上げると、用水路の脇のスペースにこの辺りには不似合いなピカピカに光る黒い車が停まっていた。 パトカーじゃなくても警察関係者の車だとすぐにわかる。それぐらい頻繁にあいつらは調べに来ていた。 「絶対俺が疑われてるよな?」 「だとしても大丈夫だよ。光一郎には完璧なアリバイがあるんだから。」 不安そうな彼を力づけようと手を握る。少し汗ばんだ光一郎の手がギュッと握り返してくれてホッとした。不安だったのは私の方だったのかもしれない。 完璧なアリバイ。そんなものがある方が疑わしいと言ったのは誰だったっけ。 用水路は連日の雨で水かさを増し、茶色く濁っている。その上に架かっている小さな橋を渡ると、私たちの住む【テラスハウス・リバーサイド】が見えてくる。 六棟の一戸建て住宅が生垣で囲われているので、無関係な車や人が入って来にくいという利点があり、犯罪抑止・事故防止になるというのが建設当時の謳い文句だったらしい。 要は平屋建ての木造家屋が並ぶ長屋のようなものだ。 第一期の募集で入居した三世帯は私たちの祖父母世代に近く、光一郎の家族と私の家族が入居したのはそれよりずっと後のことだ。 六棟のうちテラスハウスの入口に近い一棟だけが空き家で、狭い庭には背の高い雑草が生い茂っている。それがこの貧乏くさい長屋を一層みすぼらしく見せていた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!