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その翌朝。
不良たちに痛めつけられた怪我が原因か慣れない新生活で疲労がたまっていたのか、高熱を出してしまった雅斗は、はろう建設へ電話をかけて一日だけ休みをとらせてもらった。
上司から嫌味を言われるかと覚悟していたのだが、来客中ですぐに通話を終了させたかったらしく、あっさり受理されたのはありがたかった。
そしてさらに次の朝。
まだ痛みとだるさは残っていたが、なんとか熱がひいたので出勤した。
上司に詫びた後、早速桜場の姿を探したのだが見当たらない。
もしかしたら急ぎの工事現場にでも入れられたのだろうかと思い、喫煙所で煙草をふかしていた数名の同僚に初めて雅斗のほうから声をかけて尋ねてみた。
すると返された言葉は、まったく予想しなかったものだった。
「桜場?誰だよそれ?」
同僚たちにからかわれていると思い、他の社員や上司にまで聞き歩いたのだが「ウチには桜場なんて奴いないぞ」と、皆から断言される。
雅斗は「本当の俺はアパートの布団の中にいて、まだ熱にうなされながら悪夢でも見てるのか?」と、途方に暮れるしかなかった。
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