【01】消費期限の愛

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 しなやかに鍛え抜かれた鋼のような肢体に勢いよくシャワーから浴びせられる湯が、若い肌にはじかれて玉となって落ちていく。  現在25歳のヒドウは大学4年生の頃、亡き両親の代わりに育ててくれた祖母から出生の秘密を聞かされたことによって絶望し、荒れていた時期があった。  暴力に明けくれ、忌まわしくも非の打ち所がない氷の美貌に魅かれて言い寄ってきた相手と男女かまわずホテルに行った。  しかしすでに感情を失ってしまっていたので他人の顔や体に関心を持てず、それがベッドの上であろうとたいして見てもいなかった。  そんなヒドウが愛を込めて余すところなく見て触れた初めての相手がアザミであり、口にこそ出さないが彼のモノを可愛らしいとさえ思っている。  ちなみに本人のために一言付け加えておくと、アザミのモノは決してプリティなサイズではない。  それどころかボリュームのある体格に見合ったバランスの取れた大きさであると言えるのだが、ヒドウのモノが凶悪なサイズをしているため小さく見えてしまうのだ。  パチンコ玉の隣りに置かれた野球のボールは大きく見えるが、その隣りにボーリングの球を置くと途端に野球のボールが小さく見えてしまうのと同じ感覚である。  ボディソープを泡立てて体を洗い始めたヒドウは、アザミが全身をチェックするために同棲前から浴室の壁に取りつけている曇り止め機能付きの大きな鏡を見た。
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