【01】消費期限の愛

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 この鏡に二人の交わりを映しながら濃厚に愛し合った時間を思い出し、ヒドウの手が下腹部へと伸びていく。  そのまま泡を纏わせた手を上下させると、ほどなく硬く張りつめて勃ち上がった。  自身の巨大凶器っぷりについてはあまり自覚のないヒドウだが、鏡に映し出された「物体」としてその大きさを客観的に眺めたことで「この握りしめた拳のようにも見えるものが班長の(ひだ)を限界まで広げ、さらに腕ほどの太さのものが根元まで体内に収まっているのか……」と意識した途端、無自覚なエスっ気を煽られてしまった。  それと同時に、頼もしくダンディな上官であるアザミが汗に濡れた肉体を桜色に染めて悩まし気に喘ぐ痴態や、最奥を責め抜かれながら苦悶から恍惚へと変化していく表情までもが鮮明に思い起こされて、一層ヒドウの手の動きを速めていく。 「ふうっ、アザミさん……早く貴方を抱きしめたい……そして……抱きしめて欲しい……うっ……く」  ヒドウの切ない声が、シャワーの水音と混ざり合い流されていった。  翌朝、休暇一日目のヒドウは愛車の整備を終えると、マンションから都会を抜けた別の郊外にある「96」の連絡施設へ向かって走行した。  昨夜はまっすぐ帰宅したので、今回の残務処理をするためである。
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