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地下獣宴の開場時間となり、仮面をつけて着飾った大勢の観客が試合会場内へ優雅に入場する光景を、特別室のガラスの壁に近付いた二人が見下ろす。
「照明や音楽の演出ってぇのかな?すげぇ気合い入ってるな!まだ試合が始まる前だってのに、なんだかもうドキドキしちまう」
「それは光栄でございます。地下獣宴における最も人気の高い宴を心ゆくまでお楽しみくださいませ」
「もしかして阿窟さんが準備に忙しかった大イベントってのが、これかい?」
「さようでございます。今宵開催致します『完全デスマッチ』では全四試合、合計にして八名の獣士がリングで闘う予定となっております」
「ふぅん、ここの試合は普段から過激だろ?その中で最も人気って、何が違うんだ?」
そうアザミが尋ねると、その質問を待っていたと言わんばかりに口角を上げた阿窟が、
「貴方様ならどう違うと思われますか?」
と、楽し気に返す。
「そうだなぁ……デスマッチって言葉自体、完全に決着をつける試合って意味だろ?それをわざわざ完全デスマッチなんて言い方をするなんて……まさか……」
「くくっ、さすがはアズミ様。その通り、どちらかの死亡が確認されない限り、終了とならない試合なのでございます」
アザミはこれほど大勢の人間たちが、殺人の瞬間が観られるのを楽しみにしながら大金を賭けて遊ぶために集まったのだと思うと、吐き気がしてきた。
「おい、なんだよそれ!決着がつけば、何も殺す必要なんてないだろう?」
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