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誰もが畏怖する阿窟に真剣に意見するアザミを、扉の横に立っている秘書がじっと見つめている。
「必要は大いにございますよ?日常で得られる興奮や娯楽で満足出来るのであれば、わざわざ人目を忍んで地下獣宴を訪れなくても良いのでございますから。ご贔屓にしてくださる皆様は、どれだけ大金を積んでも法の下では決して得ることの出来ない刺激を求めて、ここに通われているのでございます」
甘ったるいハスキーボイスが温かい水あめのように、べったりとアザミの耳にこびりつく。
「そのように私の周りには、リングを染め上げる血や生命の終わりをエンターテイメントとして楽しむ者しかおりませんでした。もちろん私もその一人ではございますが」
と、アザミのネクタイをするりと外すと、そのまま慣れた手つきで両手首を腰の辺りで背後に束ねて縛ってしまった。
「な、なにすんだよ!」
阿窟は白手袋を外すと、ガラスの壁の手前に設置されたカウンターテーブルの端へアザミの上半身をうつ伏せに倒させた。
アザミのすぐ右側にはガラスの壁という位置関係となり、試合会場の高い天井から下げられたきらめくシャンデリアと不気味なリング、そしていつもより増やされた観客席がよく見える。
「さらに口先では可哀想だ、せめて命だけでも助けてあげてと言いながら乳首を尖らせ股間をいやらしく濡らしている、優しい自分に酔いしれたいだけの偽善者も私は数え切れないほど見てまいりました。それに比べて……」
と、突き出した状態となってしまったアザミの腰を抱き込むと、流れるような手つきでズボンのファスナーを下ろす。
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