【01】消費期限の愛

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 特にコーヒーを淹れる腕前は片岡も「味にうるさくない私が、他のコーヒーを飲めなくなってしまった」と、絶賛しているほどだ。  きっと秘書になる前、いろんなタイプの客に真摯(しんし)に接してきた優羽だからこそ、保護色レベルとも言える片岡の姿を確実に捕捉できるようになったのだろうと「96」の精鋭たちは感心している。  すでに互いを知っているため、ヒドウに気付いた優羽が近付きながら笑顔で会釈をした。 「こんにちは、ヒドウさん」 「優羽さん、前回の報告の際にはお世話になりました」  と、ヒドウからも挨拶を交わした後「カギヤさんはお元気ですか?」と、任務時に相棒(バディ)を組むことも多いアザミ班の先輩について尋ねた。 「はい。もう腕の怪我も大丈夫だし、またヒドウさんと組みたいって言っていましたよ」  その時ヒドウは、優羽の左手の薬指に前回会った時には見られなかったプラチナのリングが輝いていることに気付いた。 「その指輪、とてもお似合いですね。カギヤさんからですか?」 「ありがとうございます!はい、ペアリングなんて驚きましたが、すごく嬉しくて……僕の宝物です」
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