【01】消費期限の愛

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 最近新しいマンションへ引っ越してカギヤとの新生活を始めたばかりの優羽が、真っ赤に頬を染めながらも幸せそうに微笑む。  その後、現在片岡が他の班との打ち合わせに参加中だと聞いたヒドウは秘書である彼に伝言を依頼し、ツチノコ探しを終了したのであった。 「指輪か……」  アザミに自分とペアのリングを贈ったら喜んでもらえるだろうかと考えて、ドキリとする。  ヒドウとしてはアザミの前で片膝をついて、小箱に入った指輪を差し出すくらいの心の準備はとっくに出来ていた。  しかしアザミは悪党相手にハニートラップを仕掛けて情報を引き出すのが、主な仕事なのだ。  万が一にでもその指輪が原因でアザミを窮地に立たせてしまうことにでもなったら……と、ためらってしまう。  アザミから現在同棲するきっかけとなった自宅の合い鍵をプレゼントされた時から、自分からも特別な何かを贈りたいと考え続けてはいるのだが……。  誰かを愛することも、心を込めたプレゼントを選ぶことも初めてに等しいヒドウは、真剣に考えれば考えるほど決めかねてしまっていた。
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