【01】消費期限の愛

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 しかし同時に「特別なものを贈りたい相手がいる」という幸せも感じていた。 「今回の休暇は班長の帰りを待ちながら、自主トレとプレゼント探しがメインとなりそうだな。……ん?」  玄関口へ向かって歩いていたヒドウが喫煙室の前を通りかかった時、ある人物が見えた。  誰が利用しているのかを廊下から確認出来るように、不透明な扉にガラスの小窓がつけられているのだ。  そこにはソファに腰かけて黒い紙巻煙草を咥えながら書類に目を通している、ライダースーツ姿のゴウガミの姿があった。  現在35歳、元警視庁交通機動隊の副隊長であり、組織内で唯一拳銃の携帯を許可されている01班、通称「ゴウガミ班」の班長である。  実戦によって鍛え抜かれた体格をしており、隙を感じさせない鋭い目、短く整えられたあご髭や褐色の肌からは強い雄が放つ特有の色気が感じられる。  ヒドウと同じく彼もバイクが好きで、部下や仲間たちから畏敬(いけい)の念をこめて「黒鉄(くろがね)の獅子」と呼ばれているスーパースポーツタイプの大型バイクを愛車としていた。  誰からも一目置かれる実力者でありながら(おご)ることなく、気さくで謙虚なゴウガミは本人の知らぬ所で憧れを越えた熱い想いを寄せる者も多いのだが、現在まだ特定の相手はいないらしい。
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